カナダ放浪記



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 2002年の春から秋にかけてボクはCANADAのトロントへ行ってきました。
それはスリルと興奮の連続の冒険をしているようでした。
ここでは、そんなカナダの旅を少しずつ書いていこうと思います。
放浪記Vol.17 レコーディング
 レコーディングの日は突然やってきました。もうすでに十分過ぎるほど一緒に演奏をしたパトリックから今週末にスタジオ入りの予約を取ると伝えられました。 勿論、ボクはいつでも準備万端!快くOKを出しました。エイドリアンというレコーディング・エンジニアのホームスタジオをドラムのクリスの紹介で格安で押さえ、レコーディングに望むことになりました。

 レコーディング当日
ということで前日は緊張したり、録音する曲をしっかりと見直すのが当然でしょうが、ボクは一切の譜面には手をつけず、緊張もせず、普通にいつもと変わらない日を送ったんです。 だって、それまで演奏し過ぎなくらい練習を積んだんですから新鮮さを少しでも取り戻さなければなりませんからね。
当日、パトリックはボクのマンションに迎えに来てくれる事になっていました。待つこと10分・・・20分・・・30分・・・「忘れてるんじゃないか?」そう思ったボクはパトリック宅へ電話することに。 そこで出たのはパトリックの奥さんでした。「今、あなたを迎えに行ってるわよ」との事。事故にでもあったんじゃないかと思いましたが、数分後ニコニコしながらパトリックが現れました。 このカナダ人の時間に対するルーズさは本当にどうにかならないものかと思います。

 さて、ここからが冒険の始まりです!とにかくスタジオまでが遠いんです。パトリックからは2時間くらいと聞いていました。 高速に乗り一気に西へ!周りの風景はどんどんと緑が多くなっていきます。トロントのダウンタウンしか知らないボクはここに来てようやく大自然カナダを体験することが出来ました。 とにかく平坦な場所の連続、地平線までは見えないまでも、ず〜〜〜〜〜っと畑だったりする場所もあり、先には牛が歩いていました。牛ですよ牛!牛がそこらを歩いてるんです。どんな田舎なんだ(爆笑)。けれど、もう最高!街中に入っても木々が生い茂る並木道だったりして、 ポツンポツンと見える店。「いったいこの辺りの人は学校とか病院に行くのにどれだけの時間をかけるんだろう?」って思いパトリックに質問することに。するとカナディアンらしい答えが返ってきました。それは
「便利さを取るか、心の安らぎを取るか」ということらしいのです。やはり大自然に囲まれて生活するのは都会の生活よりストレスが少ないようです。またカナダの人はとっても自然を愛しているのでしょうね。
 そうこう話している間も車はどんどん田舎へとすすんでいきます。こんなところに本当にスタジオがあるんだろうか?・・・そう思ったその時です。線路が見え、遮断機が降り始めたので車を停止させました。1分経過・・・・2分経過・・・3分経過・・・。 なんて長い列車でしょう!確かに速度もあまり速くないのですが、それにしても長い!長すぎるんです。この貨物列車が!しかし、そんなに長い列車が通っても渋滞にならないところは流石!そう、ここはもう大自然カナダなのです!・・・その後、途中道を間違えながらもなんとか近づいている模様。 パトリックは度々、歩いている人に道を聞いていましたけど。アスファルトもない、そんな林道に入るとスタジオはありました。いや、見た目はもう別荘!家の手前10メートルに来ても木々が生い茂っていて別荘は見えません。(←スタジオだって) しかし、一旦細い道を抜けて中に入るとそこはもうトトロの森!・・・ここには何かがいる!それもとびっきりの何かが・・・そんな感じがしましたね。

早速、荷物を降ろしスタジオ(お宅)へ向かいましたが、入り口がみつからない。裏口を回ってようやく地下に入る扉をみつけました。 そこには、既にドラマーのクリスが来ていてエイドリアンもセッティングを終了させていました。大きな打ち合わせもなくすぐに支度をしました。 演奏する曲はボクのオリジナル「尾鷲からの贈り物」を含め6曲程度なので、すぐ終わるだろうと思っていました。しかし、ここからが試練だったのです。 レコーディングをする曲の大半はフリージャズ。ムードはフリジアン系モード(ゲゲゲの鬼太郎のようなムードといいますか)とにかく、ストレンジサウンドを出さなければならないのです。バンドの組み合わせも、バスクラリネットの怪しげな音にパーカッションにボクのギター・・・ 演奏をするだけでも集中しなければならないのに、会話にも集中しなければならない!また、録ったばかりの音源を評価しなければならない!とにかく長時間集中しなければなりませんでした。 その間、スタジオに用意されているのはコーヒーと水のみ。小腹も空いてきます。そうそう、コーヒーを貰った時エイドリアンに「砂糖とミルクはいるかい?」と聞かれ「ブラックでいいよ!」と答えると一同信じられないって顔をするんです。 パトリックが一言「ストレンジ・ジャパニーズ・ガイ!」って!ブラックで飲む人ってあちらでは少ないんでしょう。・・・・録音は順調に進んでいき、3時間程度で終了しました。サウンドにはとても満足できました。 簡単に写真撮影をして、クリスは帰ることに・・・またここからが長かったのです。編集が始まり、その間ボクとパトリックはスタジオの中でずっとその模様も見ながら待たなければならなかったのです。スタジオ内にあるものは変わらずコーヒーと水のみ しかし、エンジニアの凄さを目の当たりになりました。ボクが聴いていても普通の音楽・・・そこからギターの音を除き、クラリネットの音を除き、ドラムの音をひとつずつ消していくと、そこにはドラマーの椅子が「ギシッ」と鳴った音が入っているんです!もう驚愕でしたね。ほんの小さな椅子の音を全ての音がある中で聞き分けてしまうんですから! ・・・その状態でまた更に3時間が経過・・・やっとのことで編集が終了しました。そこで、コピーを2枚焼いてもらったんですが、何故かコピーにも凄く時間がかかっていました。

 計6時間半後、やっとレコーディングも終了し車に乗り込みました。帰り道をエイドリアンに聞いから車を発進させたんですが、パトリックがいきなり道を間違えるんです。「さっき、エイドリアンが右って言ってたよ」ってなんでボクが道を教えなきゃなんないんだ! クタクタの状態でもしっかりと英語が聞けてた!今思えば、ボクのヒアリングも大したもんだ!無事に元の道に戻れたはいいものの、周りは真っ暗、街灯すらない道を猛スピードで突っ走りました。なんで猛スピードかって?パトリックは愛犬フィニックスのことが心配でたまらなかったんですよ!! 一応出発前に散歩に連れていき用を足たせたのですが、ご飯を用意するのを忘れてたらしく、「俺は悪い飼い主だ」って言いながらグングンとスピードを上げるんです。隣に乗っているボクは恐怖でした。 高速に乗るとパトリックの運転は更にエスカレート!マイル表示なのでどの程度のスピードが出ているのか相変わらず分からなかったんですが、とにかく追い抜かれる事が一度もなく、どんどん追い抜いて走る。行きにあれだけの時間がかかったのに、帰りはすんなりと家に着いてしまいました。 マンションではフィニックスが待ってましたとばかりに飛び出てきました。抱き合う2人・・いや1人と1頭・・・ほんの数時間でも離れただけでも2人は寂しかったお互いの時間を埋めるようにじゃれあっていました。すると「散歩に連れて行くからここで待ってて」と言われ一人になりました。 一人パトリックのマンションに居ると妙に満足している自分がいました。クタクタに疲れた体をトロントの夜景が癒してくれ、静かな部屋で遠い日本を思い出したりもしました。こうやって頑張っていれば絶対にうまくいく!そう確信した時でもありますパトの部屋が薄暗い照明のみということもあり、その時の夜景は今でも忘れません。

「痛い!!!」・・・・痛みと共に素敵な空間から現実世界に戻されました。足を見ると、どうやら蚊にさされたようなのですが、さされた跡が物凄い大きい上に痛みまで感じるんです。 カナダの大自然の蚊は強力でした。この蚊にくわれた跡はしばらく消えませんでしたよ。もし、アマゾンとか熱帯雨林の奥地だったら、こんなものよりもっと強力で恐ろしいことが待ち受けているのでしょうね。トロントで良かった。


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